ゆきの中の子犬



 この詩教材は、かつて1年生の教材として光村図書の教科書に提示さ れていたものです。

 この方式で子供に力をつけるための教材として、適切なものと思います。

  この方式の入門期の教材として、どの学年でも扱えるものです。







教 材文


  


て  






い。








あ、























て。












ね。
















の  




が 






よ。



の  




に、











へ  




ゃ 


め。











よ。
















ど、













へ  




ゃ 


め。








に  







の に。







ら  


たの。











































  

 
 
 


1  この教材で指導できること

  学年やこの指導法の経験によって指導できることは違ってきます。

 この教材で指導できるのは、1年生以上中学3 年生まで(極端に言えば大人も)が対象に出来ます。
 
ここで は、この「ゆきの中の子犬」で指導できる総ての内容について述べていきます。

「お 母さんのための解説」 参照


  0 想像の仕方( テレビの映し方)

   詩を読んでその詩が描いている情景を想像することが出来ること が最低条件です。表現されていること、されていないことを正確に想像できなければ追体験したことになりません。

  そのための手がかりを述べていきます。

  1  題の役割、効果 

 最初に読者の目に入るのが、「題」です。題は内容を規定していま す。

  「雪の中に子犬がいるのだな」ということが提示されます。どんな雪がどのように降っているのか。晴れている一面の雪の世界か。野原なのか、町の中なのか。 何匹なのかは明示されていません。これらのことは読んでいくうちに明らかになってきます。ここでしっかり押さえておかなければならないことは、子犬であっ た小犬でないことです。小さい犬ではなくて幼い犬なのです。

 2 語り手と作者との違い  

 語り手というのは、この詩の世界を読者に語ってくれている人のことを言います。作 者とイコールの時もありますがほとんどは作者が創り出した人物です。

 この詩の作者は、「すずきとしちか」さん ですが、この世界を見ている人は、女言葉が使われていることから男でないことが明らかになってきます。


  3 視点、視点人物と対象 人物

 この詩の世界は、語り手の眼から見た世界です。語り手は、どの位置からこの世界 を見ているのでしょうか。それによって同じ世界でも違ってきます。この語り手の位置を視点といいます。

 語り手 がある人物の目(ビデオカメラと考えるいいでしょう)と同じところにある場合が多いです。その人物を視点人物といいます。視点人物から見られている人物を 対象人物といいます。

 この詩では、視点人物は描写されていませんが子犬を見ている人物で、子犬が対象人物で す。

 4 カメラの位置、移動 

  子供には、語り手(視点人物)が、ビデオカメラを構えて、この場面を見ているのだと考えさせると分かりやすいです。視点人物の目の高さで、視点人物が見て いることを想像させます。
 
  対象人物の顔が大きく映ったり(アップ)、場面全体が映ったり(ロング)します。瞬間に映る角度が変わったり出来ます。相撲中継を例にして説明すると分か りやすいです。あるときは、真横から、あるときは真上から、力士の背中と相手の顔がと思ったら相手の後ろから、といった具合です。


  5 画面の立体構成 

 画面は、平面ではありません。立体的に映っています。手前に何 があり、奥に何かがあります。

 6 詩の構成    

  詩のひとまとまりを「連」といいます。
 この詩は、3連から構成されています。

  7 いろいろな表現技法

 9 表現技法

 (1) 倒置法
    さむいのね。そんなにふるえて。

 (2) 句読点の有無、韻

 (3)文末表現

    語り手が子犬に話しかけて いることが分かります。口調から大人の女の人らしいことがわかります。

 (4)文体

   敬体です。

 (5) 時制

   現在形です。


  8 空行の効果、改行の効果 

 3連ですから、空行(行空け)が2ヶ所あります。

  ただむやみに空けているわけではありません。それぞれ意味があるのです。

 主に、断絶と連続を表します。断絶 は、前の連と時・場所・登場人物が違ったり、語り手の心情の変化を表します。連続が、前の連と
時・場所・ 登場人物は変わりませんが、人物の移動を表します。
 

 9  プラ スイメ―ジとマイナスイメ―ジ  

 この詩には、プラスイメージの言葉や行動しかあり ません。

15 比較の思考法(類比、対比)



2  イメージを描こう

イメージを描 くための読み方には、2つの方法があります。
1 展開法
  私たちが普通に作品を読むように、始めから順に読ん でいく方法です。読むに従って情景や人物などが明らかにイメージ化できます。
2 層序法
  ある視点から全体を見る読み方です。その視点に関する部分に焦点を当てて全体を見て息問題を解決していく読み方です。作品を一読してからの方法です。一度 に作品全体を見ていくのですから物語では読み込んだ後でなければ取り掛かれませんので、高学年が対象となります。でも、詩の場合は比較的簡単に取り掛かる ことが出来ます。


   情景のイメージ化



  
14



て  






い。
 













13


あ、






















12









て。















11





ね。



















10
    
 































の  




が 






よ。












の  




に、




















へ  




ゃ 


め。




















よ。

























ど、






















へ  




ゃ 


め。













































に  







の に。

















ら  


たの。






































 

























  

 
 
初読で考えられること

1  情景
  時  現在 午後らしい。
  所  野外 住宅地らしい。
  天候  雪降り  地面に積もっている。子犬が歩けるくには苦労だが、人間にとっては少し。
  音    聞こえない。
2 人物
   子犬→対象人物
  子犬に話しかけている人物(女性)→視点人物(語り手)
3 一貫して視点人物が子犬に話し かけている。会話体。
4 敬体で女性語を使用している。
5 三連で構成されている。
6 文 末から、優しい感じを受ける。
7 文体から1年生の後半、秋頃以降が指導時期(分かち書き、漢字)


1  展開法

題(0行)→雪が降っている。その中に子犬が いる。
       作者が男性。


一連目
 1行目→語 り手が話しかけている。 
 2行目→「こんなに」から、雪の降り方がわかってくる。雪が激しく降っている。しかし、風はない。
倒 置法を使い、語り手の「子犬がこんなに雪が降っている中どこから来たの」という感情を強調している。


3行目(空行)→この空行は、連続を表してい る。子犬が雪の中を動き
回っているのを語り手がじっと見ている。


二連目
 4行目→子犬が ある方向へ行きかけた。やさしくとめている。
 5行目→雪が積もっていてお前には分からないかもしれないけれど
  6行目→どぶがあるんだよ。

  子犬は分かったのか違う方へ歩き出した。

  7行目→再び止める。
 8行目→そっちへ行くと垣根があるよ。
 9行目→雪で分からないだろうが、バラ線(とげ とげのはり金)があって危ないよ。


10行目
(空行)→この空行も、連続を表している。前 の空行より時間が長い。
           子犬が雪の中を動きまわり、二連目と同じように危険を告げられ、
最 後には語り手の傍に来て見上げ            る。

三連目
11 行目→「さむいのね」と優しく語りかける。
12行目→
傍に来たのでひどく震えている 子犬の様子がわかる。子犬がアップされる。語り手がしゃがむ。
  ここでも倒置法。
13行目→呼びかける。様子を見ていた女性が心を決める。
14行目→立ち上がり、指示して歩き 始める。

余韻→女性が歩く後を子犬がついて行く様子が だんだん遠くなる。
     ここで語り手は、視点人物(女性)からはなれてとどまっている。


2  層序法

視点

1 子犬の行動を追う。

   雪が降りしきるなかを歩き回っている。
  危険なほうに行くと、女の人に注意されて戻り、違う方に行きまた戻る。
   このようなことを繰り返してどうにもならなくなり、最後は女の人の足元で震えている。
  女の人についておいでといわれてその後を ついていく。

2  どんな子犬か

  子犬は対象人物なので、視点人物(女の人)が描写しない限り読者 には分からない。
  本文中には子犬の様子は一切描かれてはいない。
  しかし、題に「子犬」とあるので、その 範囲以内で読者は自由に想像できる。どんな種類か。どんな毛並みか。  

3 それを見ている視点人物(語り手)は、どんな人か。

  視点人物の話かけでのみ表現されている。 言葉づかいから女性であることが分かる。
  子供なのか、大人なのかということになるが、14行目に「ついていらっしゃい」とあるこ とから、家に連れて帰っても問   題がないと判断できる女性である。とすれば、子供ではなく大人ということになる。

4 女性の気持ちの深まり。

  子犬の行動を見ているうちに女性の子犬に 対する思いが強まり、保護してやろうと思うまでに深まって行動に移る。

5 余韻について

  
「つ いていらっしゃい」で終わっているので、この後どうなるかわ示されていない。
  この後どうなるかお子どもたちに想像させたい。

6 この詩の印象

  
こ の詩の現実世界は、「雪が降りしきっている」ので当然、「寒い」はずである。

  女の人の心情と行動を考える と、「温かい」。この詩は温かい詩だということが出来る。

  色彩的に考えると、静かな白の世界といえるだろ う。





3  第 五学年実践案(1時間扱い)                       
         実施時期 8月
(勤務校ではあるが、初め ての学級での実践) 


1  教材について

   第5学年の理解領域の目標は、「主題や要旨を理解しながら、文章を読んだり、話を聞いたりすることができるように するとともに、読書を通して知識を増 し心情を豊かにする。」ことである。これまで、「詩を読もう(虻、春、われは草 なり、海雀)」で詩を読む楽しさや詩の表現技法に触れてイメ―ジをつくる 方法を学習し、「情景を思いうかべて(大造 じいさんとガン)」では、人物の動きの表現や文末表現などをもとに情景のイメ―ジ化を中心に学んできた。本教 材では 、詩の世界のイメ―ジ化の方法を学習させていきたい。

   「ゆきの中の子犬」は、三連から構成されている会話体の詩である。子犬の様子は直接描かれてはいないが、語り手の 言葉から想像できるようになってい る。子犬を見守っているうちに、語り手の気持ちがだんだんに高まつていきついには 、「さあ ついていらっしゃい」という表現になっていく。情景や人物の 気持ちをイメ―ジ化する方法を教えるために適 切な教材である。

2 指導目標   

 (1) 価値目標  子犬に対する語り手の気持ち(優しい)と詩の世界のイメ―ジ(寒い中の暖かさ)をとらえることがで              きる。
 (2)技能目標  表現に即して文の細かい点に注意しながら、語り手の気持ちや情景を想像しながら 読むことができる。

 (3)言語目標  文の中での語 句の係り方や照応の仕方を理解して、いろいろな文の構成が あることを理解することが            できる。


3  本時の計画       

 (1) 目 標

  ア 価値目標       「語り手を優しい人、暖かいのは語り手の心」ととらえることができる。
  イ 技能目標       イメ―ジ化(情景や人物の気持ちを想像しながら読む)の方法について知ることができる。
   ウ 言語目標     詩の構成や倒置法、反復、空行の効果について指摘することができる。

 (2) 指導したいこと

  ア 題の役割、効果
  イ 語り手の存在
  ウ  語り手と作者の区別
   エ 視点、視点人物
  オ カメラの位置、移動
  カ 画面の立体構成
  キ 詩の構成
   ク 空行の効果
  ケ 倒置法の効果
  コ 反復によるイメ―ジの強調、深まり
 
4  記入シート


1 どんな感 じがするか。

    静か うるさい     寒い 温かい

2 どんな色を感じるか。

    赤 黄色 緑 青 白 黒 灰色

3 語り手は、どんな人か。
 
   男 女
    大人 子供(みんなより大きい 同じ 小さい)
    どんな心の持ち主か



4 つぎの行の時の情景を想像して書きなさい。

   三行目



  八行目



   十四行目の後



5 授業の感想


 

5  指導の概要

         学習活動時 間(分)  指導の要点 主な発問 評価等
1 本時のめあてを確認する。 1 ・この詩はど んな感じがするか。
2 テレビの存在を知り 映してみる。                   
 5 ・みんなテレビをもっているんだよ。
 ・ 先生の顔を映してごらん。
3 題から1行ずつ視写しながら、 イメー  ジ を作っていく。
       (随時音読する)



























17 ・子犬と小犬の違い。  (題を書く)
  ・ 何が来たんだろう。                        
  ・何が降ってい るんだろう。                           
  ・どんなに降っ ているんだろう。         こんなに                         
  ・子犬に話しかけているのは、誰でしょう。                              
    (予想1)      小学生、中高校生、若い人、大人、老
            人、 男か、女か 
                    
   ・子犬はどっちにいったんだろう。                                               
   ・何があるんだろうね。              どぶ
                           
  ・こいぬはどうした? 
                         
 
 ・こんどは、どっちにいったんだろう。    ・かきね 

  ・その後はどうしたか な。

  ・子犬はどこにいるんだろう。
 
  ・震えていることはどうして分かりましたか

  ・子犬は どうなったかな。
                              ついていった

4  音読をする。(一斉読) 3
5  詩の構成を指摘する。 1 ・この詩は、いくつに分れていますか。
6  範読を聞きながら、イメ―ジをつくり  確めていく。 5 ・空行の部分のイメ―ジ化
   ・子犬が動いていることを指摘できたか。
 ・最後の部分のイメ―ジ化
  ・子犬に話しかけているのは、誰でしょう。
  ・文末表現   
・女性語  
  ・表現の工夫によるイメ―ジ化       ・倒置法           
7  語り手の人柄について話し合う。 5 ・この人はどんな心の人だろう。
 ・
優 しさを感じることができたか
8  音読をする。(斉読・指名読) 
9  詩全体の印象について話し合う。      指名読・暗誦
  ・風は吹いているかな。
 ・ 音が聞こえますか。
 ・寒い感じがしますか。暖かい感じがしますか。   
 ・何が暖かいのでしょうね。
10 音読を する。    指名読(暗唱) 1
             

                               
        
                                                 
                                                                                                                 







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