お 母さんのための解説
     <物語文学習> 


  「教師とお母さんのための国語指導法」で使っている用語について解説します。 

   教師にとっては通常使っている用語ですが、お母さん方にとってはなじみのない言葉も多く使っています。

   子どもに聞かれた時、答えることができるように書 こうと心がけました。

        目     次

   1  題

   2  通読

   3  形式段落と意味段落

   4  つなぎ言葉(接続語)

   5  こそあど言葉(指示語)

   6  重要語句

   7  文末表現

   8  文頭

   9  初読の感想

 10  語り手

  11 視点人物とカメラ

 12  人物

 13  中心人物と支える人物、対の人物

  14 視点人物と対象人物

 15 場面

 16  場面の三要素

  17 呼称

 18  テレビの存在

 19 情景を思い浮かべる

 20  プラスイメージとマイナスイメージ

  21 表現技法

 21  比較の思考

 23  作者の工夫

  24 作者の感情・態度

  25 主題

  26 作者の願い  

   




  1 題

    これはお分かりの通り、文章(教材)のタイトル(題名)のことです。

     作者は、読んでくれる相手(読者=子ども)を念頭 において文章を書いています。1年生の教材であれば、1年生の子どもたちが

    読んで理解できるような内容を取り上げ、1年生の 大部分が理解 できるように、文章を構成し、1年生が飽きないで最後まで読ん

    でくれるように工夫しながら物語の世界を展開して いくのです。

      その工夫の大事なものとして、「題」があります。

    題は、その物語文の主題(何が描かれているか)を端 的、あるいは象徴的に示しています。

    端的な題の例としては、「スイミー」や「モチモチの木」、「ごんぎつね」、「大造じいさんとがん」などが挙げられます。

   象徴的な題の例としては、「お手紙」や「一つの 花」、白いぼうし」、「海の命」などが挙げられます。


  2 通読

       その教材を最後まで読むことです。

      1年生では、音読(声に出して読む)からはじまります。はじめの段階は、「分かち書き」(普通ならきらないで続け て書くところを

     きり、空白をおいています)をその通り読むことから、次第に空白をとばして読むように進みます。

      はじめに提示される教材は、文章が短いです。やがて、句読点で、「間」をとることを身につけ、早く読めるようになります。

     一斉読(全員で読む、班で読む)や指名読(個人を指名して読ませ、他の子どもたちは、それを聞きながら文章に目を走らせ黙読

     くします)が使われます。 高学年になると、黙読が主になります。

 

  3 形式段落と意味段落

     「文」とは、句点(。)で区切られた一つの文のことです。

     「文」が、一つ以上集まって、ある事柄について述べてある部分を「段落」といいます。

    「段落」は、1マス分下がったところから、次の一とマス下がったところの前までです。これを「形式段落」と呼びます。ふつう「段落」

    というとこの「形式段落」のことです。

    しかし、物語 文の場合は、会話文が入っているためちょっと面倒です。機械的に1マス下がったところを探していくと、会話文の所

    で迷います。いろいろの考えがありますから、みんなが同じになるとは限りません。一番いいのは、教師が指示したことによって段

    落分けをするのがいいでしょう。

     「意味段落」とは、「形式段落」が集まって一つの大 きなこと表すとき使います。「意味段落」内の 「形式段落」は、連続していま

   す。 「形式段落」が一つで も、前後とむすびつかなければ、「意味段落」となります。

    「意味段落」を示すために、1行空けることがあります。「行空け」とか「空行」といいます。

 

  

  4 つなぎ言葉(接続語)

 

     前後の文をつなぐ働きをしているのが、「つなぎ言葉」です。これは低学年用の用語で、高学年では、「接続語」というようになり

     ます。「接続語」という用語は大学まで変わりません。

      見 つけ方は簡単です。前後の文をつないでいるのですから、前の文の後にあり、次の文の前にあります。読点(。)の後にありま

     す。つなぎ言葉の後には、必ず句点(、)がありますから、必ず見つけることができます。

       教科書に出てくる接続語を挙げてみましょう。

     1 前の文に続けて、後の文がある場合(同じ内容が書いてある)

       そして  そうして  それか ら  そこで  それで  それどころか  それに  すると  また

        おまけに  さらに  やがて  それから  そうしたら  とたんに


      2 前の文の内容を発展させたり、例を挙げたり する場合

       やがて  ところで  ですか ら  もし

      3 前の文と反対のことが書いてある場合

       しかし  ところが  けれども  それでも でも
 


  5 こそあど言葉(指示語)

      言 葉のはじめに、「こ、そ、あ、ど」がつく言葉のことです。

事 物 場所 方向 人称 連体詞 副詞 形容動詞
コ系列  これ  ここ  こっち(こちら)  こいつ(こなた)  この  こう  こんな
ソ系列  それ  そこ  そっち(そちら)  そいつ(そなた)  その  そう  そんな
ア系列  あれ  あそこ  あっち(あちら)  あいつ(あなた)  あの  ああ  あんな
ド系列  どれ  どこ  どっち(どちら)  どいつ(どなた)  どの  どう  どんな

 

  6 重要語句

 

      「重要語句」は、「大事な言葉」  ともいいます。低学年では、だいたい「大事な言葉」といいます。

      「重要語句(大事な言葉)に気をつけて読んでいきましょう」と、よくいいます。では、「どんな言葉が重要語句ですか」と聞く

      と、「それは教材によって違います」という返事しかかえって来ません。その教材ごとに違うのですから、次の教材を読むとき

      の力にはなりません。

         これでは、子どもたちには学力がつきません。

      そこで、「どの教材にでも適用でき、どの子でも見つけることができる重要語句を次のように考えました。

          (1) 題にある言葉→1~3程度あります。

            「おおきなかぶ」であれば、「おおきな」と「かぶ」の二つです。

        (2) 題にある言葉に関係ある言葉

            「おおきな」に関係ある言葉は、「とてつもなく」です。

             「かぶ」に関係ある言葉は、「たね」ですません。


        (3)頻出語句→何回も出てくる言葉です。

            これは、2回以上出てくる言葉の中から探します。3回以上出て来て、内容と関係ある場合は、紛れもなく重要語句と

            いっていいでしょう。

            「お おきなかぶ」では、かなりあります。

           「お じいさん」、「おばあさん」、「まご」、「いぬ」、「ねずみ」→これらは、かぶを引っ張る人物です。

            「ひっぱって」、「よんできました」、「ぬけません」→動作の回数が分かります。

            「うんとこしょ、どっこいしょ」→掛け声です。   

 
   7 文末表現

        「文末」というのは、文字通り文の最後のことです。子どもは、句点(。)の前だけ見ていけばいいのです。

        「文末」だけを見ていくだけでいろいろなことが分かります。

 
     (1) その文章が、敬体(丁寧な書き方)である か、常体(普通の書き方)であるかが分かります。

          敬体は、「ます」「です」となりますし、常体は、「ある」「である」となります。

          普通物語文は、敬体で書かれていますが、部分的に常体で書かれているところがあります。これは、読み手をあたかも、

        その場にいるように感じさせるためです。臨場感や緊迫感を与えることになります。

     (2) 時制が分かります。

         時制というの は、そのことが過去のことなのか、現在のことなのかということです。

         「過去形」は、文末が「た」とか「だ」で終っています。「現在形」は、「る」とか「す」で終っています。

         物語文は、過去形で書かれているのが普通ですが、臨場感や緊迫感を与えることが必要な場面では、現在形を用いま

         す。



  8 文頭 

& nbsp;      「文頭」というのは、文のはじめのことです。「文末」と対だと考えてください。

              文頭の言葉(段落のはじめの言葉)を見るだけで、その文(段落)のことがわかります。

       (1) 主語として使われている場合は、その文に何のことが書かれているかが分かります。

       (2) 接続語の場合は、前の文との関係が分かります。

       (3) 指示語の場合は、前の文にその指示語の指示内容が書いてあります。それを指示語と入れ替えて読むと意味が

         通じます。 

  9  初読の感想

       その教材を始めて読んだ感想の こ とです。

       何でも思ったことを書けばいいのです。間違ったことを書いてもかまいません。思ったこと を 書くことが大事です。

      何にも書けない子がいます。何を書いたらよいか分からないのです。具体的に問 いかけをしてやってください。

      どんな感じ(おもしろかった、つまらなかった)がするか。中心人物は 誰か(好きだ、嫌いだ)などからはじめましょう。


 

10  語り手

        その物語を話してくれている人がいます。姿は見えませんが、その場面を見てその様子を話してくれる人がいるのです。語  

       り手は、いつでも、どこえで も瞬間的に移動できます。そして、その場の情景や出てくる人物の姿を私たちに見えるように描写

      した り、その人物の心の中を語ったりしてくれます。

       語り手は、作者が創り出した人物 ですが、作者ではありません。

     


11  視点人物とカメラ

       語り手は、自分の目で見たり聞いたりしたことを語ってくれますから、私たちはその世界を追体験することができるのです。

      語り手は、時には、登場人物(視点人物)の目に なって語ることもあります。その時は、その人物の目から見た世界を見ること 

     になります。その人物の 心を知ることができます。

      ですから、私たちが見る世界は、その視点人物の目がその世界を映し出して いるカメラの位置ということになります。した   

     がって、その世界の映り方が違います。
  たとえば、「我輩はねこである」では、語り手が猫ですから、猫の高さから見える世    
     界ということになります。私たち が垣根に止まっているカラスを見ている絵と猫から見えているからすとは違って映るはずで     
     す。
   
   
      また、語り手はいつでも、どこにでも移動できますから、
物 語の途中で視点人物が代わる(カメラの位置が代わる)こともあり 

     ます。
大 相撲中継でも横からだけでなく、天井から映すことがあります。横から映している時でも、東西南北のどこからでも映  

      すことができるでしょう。

      その場面の世界を正確に想像するためには、
カ メラがどの人物の傍にあるのか、人物から離れた場合は、どこにあるかが大

     きな手がかりになります。



12  人物 

        人物というのは、物語の世界に登場する人物のことです。

      擬人化されている場合は、石でも、動物でも植物でも人物なのです。

13  中心人物と支える人物、対の人物

      みなさんは、物語に「主人公」がいることは、わかっていると思います。しかし、物語によっては、明確にこの人物が「主 人 公」

      だと言い切れない場合があります。

       例えば、「お手紙」のかえるくんとがまくんを考えて見ましょう。人物の変容という観点から見ると「がまくん」が主人公といって

      いいでしょう。しかし、積極的な生き方としては、がまくんのことを考え行動する「かえるくん」が「主人公」だとも考えられます。

      どちらともいえません。この場合、「かえるくん」と「がまくん」の2人を「中心人物」と呼びます。

       それ以外の人物を「支える人物」と呼んでいます。また、2人の関係が、同等で、補完しあっている場合は、「対の人物」と呼ぶ

      場合もあります。

14  視点人物と対象人物 

      「視点人物」とは、 「語り手」が寄り添っている人物のことです。語り手はその人物の目で、心でその世界を描き出しています。カ

     メラがその人物の目になっているのです。読み手は、この人物の心は分かりますが、姿形は分かりません。

      「対象人物」とは、 視点人物から見られている人物のことです。見られているほうですから、姿形は分かりますが、心は分かりま

     せん。

     これをきちんと押さえない教室では、対象 人物 の気持ちを問う質問が多く見られます。文章に明確に書かれていないことを聞か

     れるのですから、子どもたちは想像して答えるほかはありません。できる子どもが反応しますが、他の子どもは反応できません。

     こんなことも、国語嫌いの子どもを生む原因になっていると考えます。

 

15  場面

        「とき」と「ところ」と「中心人物」が同じで、ある出来事が展開する一区切りの世界のことをいいます。

       ですから、「とき」が変わったり、「所」が変わったり、「中心人物」が変わったところで区切られます。



16  場面 の三要素

   (1) 背景

       ア 時を考える。
         
現在・過去・未来、季節、一日のうち の何時か、どう経過しているか

       イ 所を考える。
         地上か空中か、国内か外国か、海か山 か、田舎か街か、どう移動しているか


    (2) 人物

         どんな人物が登場しているか。


    (3) できごと(どうして、どうなった)

         何が起きて、人物がどう行動して、どうなったか。


17  呼称

         「呼称」というのは、人物や事物の呼び方のことです。

       普通は、最後まで変わりませんが、ときには、中心人物や事物の呼称が変化している場合があります。これは、視点人物が

       代わった時や視点人物の心が変化した時起こります。

        父親の呼称を考えて見ましょう。

      小さい 時 は、「パ」パと「か父ちゃん」とか呼びます。大きくなるにつけて、「お父さん」というようになってきます。昔は、「父上」と

       いっていました。今でもしつけのきびしい家庭では使っていると思います。

       この子が青年から中年以上になると、「親父」というようになります。ひどいばあいは、「じじい」という呼称も使います。これは、

       視点人物の成長によって起こります。これは、子どもからの視点です。

        視点が違うとまったく違ってきます。妻からですと、「おまえさん、あんた」。子どもができると、「お父さん」。孫ができると、「お

       じいさん」(これは孫の視点です)と変わります。

        誰に言うかによっても変わります。他人に言うときは、「家の人」とか「夫」といいます。もっとひどい言い方で呼ばれる時もあ

       ります。また、誰の前で言うかによっても違います。

       会社では、上司 からは「○○君」、部下からは職名で「○○係長」などと呼ばれます。

        これまでのことから気がついたでしょうが、「呼称」は、視点人物と対象人物の人間関係を判断する大きな資料を提供してい

       るのです。

        また、視点人物の対象人物に対す る気持ちも表します。

       5年教材の「大造じいさんと ガ ン(がん)」を例にとって考えましょう。

      雁のこと を、「ガン」と表記している教科書と「がん」としている教科書があります。これは教材化の段階で採用した表記です。

       また、「残雪」という題の時もあったように思います。作者の椋鳩十は、「ガン」と表記しています。

        大造じいさんがあるガンのことをなんと呼んでいたかというと、さいしょは、「ガン」と呼んでいたのが、最後の場面では、「ガ

      ンの頭領」「おまえ」と呼んでいます。大造じいさんの考えが変わったことを表しています。

18  テレビの存在

      子どもたちが、物語の世界を追体験するためには、想像することができなければなりません。想像することが得意な子と苦手な

     子がいます。苦手な子には、手がかりを与えなければなりません。その手がかりがテレビです。子どもたちの身近にあるテレビ

     を、一人ひとりの子どもの頭に設置をします。そして、文章にそった映し方をさせるのです。

      実際に見ているアニメを例にして教えるのがいいでしょう。

 
     「自分のテレビ」のつけ方、映し方の指導例

     ・ 目をつぶってお母さんの顔を映してごらん。こっちを向いていますか。横を向いていますか。
     ・ニコニコ笑っていますか。怒っ ていまあすか。
     ・ここは玄関です。朝です。あなたが学校へ行くところです。
     ・今度は画面が 切り替わります。お母さんのほうから見た画面になります。
     ・あなたの姿が映ります。どんな服を着ていますか。ランドセルを 背負っていますね。洗濯をした給食袋も持っていますね。
     ・「行ってきます」といって向きを変えて走っていきました。だんだ んあなたの姿が小さくなっていきます。

     ・今度は、このお話の世界を写してみましょう。

    カメラの位置(視点人物)、背景、人物、ものなどを 考えます。また、それらの移動の様子、音などを映し出します。


19 情景を思い うかべる


     情景とは、その世界の様子です。テレビの画面に映っているようすのことです。

    ・画面のイメージをとらえる。

        どんな背景、どんな物、どんな人物で構成されている か。 
        時……季節、時刻
        天候…晴れ 曇り 雨、嵐、雪、 気温
         画面で聞こえる音
        場面に描かれているそれぞれの色
        人物の動き

    ・画面の中で

       どんな出来事が起きているか。
       どんな感じがするのか。

     ・そのためには、カメラの位置と方向が大事です。

       カメラがどこにあるのか。地上か空中か。人物の目の高さか、もっと低いか。「我輩は猫である」では、猫の目の高さです。
       カメラがどこを向いているのか。
        カメラがだれを向いているのか。
       アップとロング
       だれとだれがどこにい てどっちをむいているのか。
       だれが近くにいて、だれが遠くにいるのか。
       などを考えなければなりません。

      考えの元になるのは文章です。 


20  プラスイメージとマイナスイメージ

       言葉、 人 物、情景、呼称などがどんなイメージを与えるように描かれているかを考えるのです。

       物語では、プ ラ スイメージを与える人物とマイナスイメージを与える人物が登場します。「ももたろう」の桃太郎と鬼がそのい
 
      いい例です。ですが、小学校の教材では、あまり悪いイメージを持ち人物は登場しません。

      花 を 形容するのに、「きれいな花」と「しおれた花」がある場合、同じ花でもイメージが違います。その言葉を修飾している言葉

     によって、イメージが違ってきます。

      言葉自体でも違います。「御不浄」「厠」「雪隠」 「手水場」、
「は ばかり」「便所」「WC」、「お 手洗い」「トイレ」「化粧室」など、時代

      や使う人によってイメージが違います。呼称でも違います。

        作者は、読み手にどんなイメージを持ってもらいたいかを考えてその言葉や修飾語を使っているのです。


21  表現技法  

     子どもたちに正確なイメージを抱いてもらうために作者は、い ろ いろな技法を用いています。

  

 (1) 比 喩 法

       人物の様子や情景を詳しく、明確に捕らえさせたい時使います。    

      教材では、「のように」とか「・・・みたいに」のように、比喩であることを読み手がはっきり分かるように 使われています。

     何を、何にたとえているによってイメージが違ってき ます。プラスイメージのものにたとえるとプラスのイ メージが伝わりますし、

     マイナスイメージのものにたと える とマイナスイメージとなって伝わります。

     教材では、読 み手がいいイメージ、正確なイメージを持つようなものにたとえるのが普通です。

      「スーホの白い馬」では、「体は、雪のように白く」と馬の肌を雪にたとえています。「かぜのようにかけだしました」と馬の走る様

      子を風にたとえています。

     「スイミー」で、 「ミサイルみたいに」と、悪いさめを戦争の道具のミサイルにたとえています。その速さと、恐ろしさを使ってスイ

      ミーの気持ちを伝えようとしているのです。

(2)  擬態法 

   ア 擬 態語

     擬態語(ぎたいご) は、「様子」を表す時使います。「動作・様子」などを表す とき使います。

     ぐったりと、どんどん、ふわふわと、ぐ んぐん、すいっすいっ、さっと、

   イ 擬音語

      擬音語(ぎおんご)は、「音」を表す時使います。ものごとを生き生きと表現 する効果や、また、ものごとに対し読み手が

     親近感を 抱く効果などの効果があります。

    ウ 擬声語

      擬声語(ぎせいご)は、「動物・人間」の鳴き(泣き)声」などを表す時使います。ものごとを生き生きと表現する効果や、

      ものごとに対し読み手が親近感を 抱く効果などがあります。

     

   学校では、擬音・擬声はカタカナを、擬態は平仮名を使 うように教えています

(3) 擬人法

     人でないものを人格化し、人に例え読み手に対し、そのものに対して親近感を抱かせるやり方です。

      低学年のお話しはたいてい擬人化されています。 「お手紙」の、かえるくん、がまくんは、擬人化されています。

(4) 倒置法 

      文章は普通、主 語→目的語→述語 の順で記述されますが、この順序を逆転させ、目的語を最後に置きます。強調するために

     使われます。


    「スイミー」では、「スイミーは見つけ た、スイミーのとそっくりの、小さな魚のきょうだいたちを。」
               「みんないっしょにおよぐんだ。海でい ちばん大きな魚のふりをして。」

(5) 反復法

     同じ言葉を何度も繰り返し(普通は2,3回)て、その言葉を強調する時使います。連続して反復する場 合 と、間隔を置いて反復

   する 場合があります。

(6) 体言止め名 詞止め)

     文の語尾に付ける動詞などを省 いて、強調させたり、余韻を残したい時使います。

     「スイミー」では、「名前は、スイミー。」。



22  比較の思考

     私たちは、赤ん坊のころから比較して 考 えるという思考方法を身につけ、その中で大きくなってきました。

     例えば、りんごが2個あるとします。どちらか好 き な方をとり なさいといわれると、その2個を比べて自分がほしい方をとります。

    大きさ、色合いを比べて、大きくて色合いの好きな 方をとり ます。りんごと柿があれば、自分の好きな方をとります。

     比較の思考は、どちらかというと根源的な思考 方 法ということが出来ます。しかし、私たちは、これを思考方法というような意識

   で使っていません。無意識に 使っているに過ぎま せん。

     この「比較の思考」を意識的に学習に使おうとするものです。

    「比較の思考」の用い方を体得すると、国語の学習 が情緒的 ではなく論理的になってきます。論理 の上に立った情緒的な学習に

    なると、今まで感性の優れた子どもだけが得意な国 語が、誰でもある程度までは喜んで学習に取り組む ようになってきます。

     
  (1) 比較の観点と思考

         どんな観点から比較するのかということが鍵になります。

    <対 比>→対比して物事を見ることによっ て、物事がより明らかになり本質がうかびあがってきます。

    <類 比>→あ る観点から物事をずうっと見ていき、類似性や共通性と特異性が明らかになり、物事の本質が明らかにな

              ってきます。

    <反 復>→同 じ物事が読んでいくにしたがって変化、発展していくことです。そのために、イメージや意味が強調され

              説得性が強まります。

   (2) 比 較の対象

         なにが比較の対象になるかというとなんで も対象になります。

         書かれてある内容や 文章の構成(文、形式段落、意味段落、文章)、言葉などいっぱいあります。

         「お手紙」で考えて見ましょう。かえるく ん とがまくんが比較できます。    

   (3)  どう比較するか

      どんな観点で比べるか。

       いろいろな観点があります。

        中心人物 の事件の前と後

        同じ点、違う点

         書いてあることと、書いてないこと

      具 体的には、それぞれの教材によって異なります。




23  作者の工夫

     筆者は、対象学年の子どもた ちが興味を持って読み進めるためのいろいろな工夫を凝らしています。

    (1) 

        どんな題にしたら子どもたちの興味を引き・最後まで読んでくれるかを考えます。学年によって題・内容とも工夫されていま

        す。

            光 村 図 書           教 育 出 版
  1年生 おむすびころりん  おおきなかぶ
 くじら ぐも        たぬきの糸車
 おおきなか ぶ  けんかした山
 りすのわすれもの  うみへのながいたび
 お手がみ
  2年生 スイミー  黄色いバケツ
 お手紙    スーホの白い馬
 ひっこして きたみさ  きつねのおきゃくさま
 わにのおじいさんのたからもの  ないた赤おに
 アレキサンダとぜんまいね ずみ
  3年生 海をかっとばせ  ちいちゃんのかげおくり
  三年とうげ     モチモチの木
 消しゴムこ ろりん  わすれられないおくりもの
 モチモチの木  のらねこ  おにたのぼうし
  4年生 白いぼうし  一つの花
 かげ       ごんぎつね
 三つのお願い  初雪のふる日
 やい とかげ  一つの花
 ごんぎつね   夕鶴
  5年生 あめ玉  のどがかわいた
 大造じいさんと ガン  わらぐつの中の神様
 五月になれ ば  大造じいさんとがん
 雪わたり
  6年生 カレーライス  やまなし
 海に命
 薫風  川とノリオ
 きつねの窓

            2社を取り上げましたが、これは私の孫の学校で使っている教科書です。
        

   (2) 筋の展開

         物語には、筋があります。どの順序でどう展開していったら、読み手が作者の意図に沿うように読んでもらえるかに工夫を

       凝らします。時間の順序に物語が展開していくのが普通ですが。現在のことが先でその後に過去のことが語られる場合もあり

       ます。出来事が時間の順に提示されない場合もあります。

   (3) 文末表現

         物語では、過去形で語られるのが普通ですが、読み手に臨場感・緊迫感を与えたい場面では、現在形を使っています。

   (4) 例の内容・順序

         どんな例をどのような順序で述べたらいいかが考えられています。

         「おおきなかぶ」では、面白いことがあります。

         教育出版(内田莉莎子訳)と光村図書(西郷竹彦訳)の訳者が違います。ですから、大筋は同じですが、大きな違いがあり

        ます。

        それは、「かぶ」を引っ張る順番がまったく逆になっているのです。

         教育出版で は、小さな者が自分より大きい者を引っ張るようになっています。

         「ねずみがねこをひっぱって、ねこがいぬをひっぱって、いぬがまごをひっぱって、まごがおばあさんをぴっぱって、おばあさ

         んがおじいさんをひっぱって}

         光村図書では、大きいものからかぶをひっぱっ ています。

        「おじいさんをおばあさんがひっぱっ て、おばあさんをまごがひっぱって、まごをいぬがひっぱって、いぬをねこがひっぱっ

          て、ねこをねずみがひっぱって」

         読 み手の受けるイメージがまったく違います。

   (5) 表現技法

         低学年では、動物が中心人物の話が多いです。どの話も動物が、擬人化されています。

   (6) 語句の使い方

        低学年では、子供たちが日常 使っている言葉や目や耳にしている言葉、和語が使われています。

       高学年では、漢語も多く使われ、会話も工夫されています。 



   

24  作者の感情・態度

      物語には、そこに描かれている出来事や人物、物などに対する作者の感情、感動、態度が必ず含まれています。

     人物の行動、心情、修飾語、助詞、文末表現、比喩などか ら、作者の感情、感動、態度を探り、物事に対する見方、考え方を学ん

     でいくのです。

      人物の心情には、直接表現されている場合と間接的に表現されている場合があります。直接表現の場合は、語り手の描写や

    会話の中にあります。間接表現は、人物の動作や修飾語から推測できるようになっています。

     その人物が好意を持っていればプラスイメージの言葉を使い、好意を 持っていなければマイナスイメージの言葉を使っています。

     プラスイメージの言葉とは、誰もがいい感じを持つ言葉のことです。

     例えば、「きれいな花」と「みすぼらしい花」では、その人物 がその花に対してどんな感情を持っているか分かります。



25  主題

       主題というのは、作品の世界に描かれている価値ということができます。作者は、さまざまな人物を登場させ、さまざまな事件


      を通して、登場人物の価値観を提示します。さまざまな人物が登場し、それぞれの価値観を持って行動します。その中で、中心

     人物の価値観が主題となります。物語は、人間を描いていますので、人間としていかに生きるべきかを追求しています。作品に

     描かれている中心人物の生き方の究極が作者の求めている価値を表しています。それが、主題です。

      主題は、中心人物の価値観ですから、中心人物の行動や気持ちを追っていけば明らかになってきます。 追っていった先に示さ

    れているのが主題ですから、最後の方の価値観が主題になります。

      主題は、価値ですからそれを表現するとみんなが同じにはなりません。基本的なところは同じになりますが、修飾部分が違って

     くることが多いです。


     「起 承転結」という言葉はご存知でしょう。物語は、原則として、「起承転結」という構成をとっています。

      起   物語の導入部です。いつ、どこでのことか、どんな人物が登場するか、どんな事件が起こりそうかなど、これから物

           語を読む読み手にとって必要なことが述べられます。


     承   「起」で提起した事柄を受け、事件が起こります。しかし、主要な事件の結末はまだここでは明らかになりません。つぎの

          「転」へのつなぎの役目をしています。


         物語の中心となる部分です。よく山場といいますが、まさにこの部分が山場です。物語の中でも最も重要な場面です。

          事件の結末が示されます。人物や、事件の価値が明らかになってきます。主題はここに表されています。


      結  物語の結末部分です。最終的にどうなったのかを示して物語を締めくくる部分になります。


26  作者の願い

      作者は、物語の事件を通して中心人物の価値を述べています。その価値の延長線(根底)にあるのが、願いです。それ

     は、作者が持っている人間としての望ましい価値観です。

      願いは、必ずしも作品に描かれていることと、同じとは限りません。作品には、マイナスのことしか描かれていないこともあ

     りますが、そのことによってプラスのことが浮かび上がってくることがあります。

      作者は、その願いを子どもたちに伝えたくて物語を書いています。そして、子供たちが その願いを受け止めて、やがて発

     展させてくれることを託しているのです。





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