「イルカのねむり方」 3年 光村図書

  お母さん方へ

1 ここで述べている学習方法は、普通の国語の授業では、このようなことを特別に取り上げては進めないと思われます。ですから、
  このやり方をしたからといって、学校の授業に支障が出ることはありません。むしろ、学校の授業の基礎的なことがらですので、 
  大変参考になると思います。

2 子どもに無理をさせないように、1日の作業は30分以内にしてください。30分にならなくても子どもが興味を失ったようであれば
  その時点でやめてください。どこまで進むかは、子どもの意欲によります。この教材をするのが何日かかってもかまいません。
  大体10日間と考えてください。最もどんどん進むのはかまいません。慣れてくれば速くなります。

3 できれば、1年生の教材を同じやり方でからやってください。どこの教科書会社の教材をやってもやり方は同じです。いくつかの教  材をやると、大体の手法が身につきます。そしてから、自分の学年の教材に取り組んでください。

4 ゲームをしているような感じでやってほしいです。

  準備するもの

1 教材(教科書) 

  鉛筆で書き込んだり、蛍光ペンで塗ったりしますので、コピーをしたほうがいいでしょう。教師によっては書き込みを嫌う人もいま   
  す。

  手元になければ、大きい図書館では、各社の教科書を展示していることがあります。それからコピーします。

  また、図書館でなければ、教科書の出版社で面倒を見てくれると思います。

2 蛍光ペン 2本

  基本的には何色でもかまいませんが、ここではピンクと黄色を選びました。




<基礎段階>

    この段階を訓練するには、その子の学年より下の学年の教材を使うといっそう効果的です。

    低学年は、お母さんが面倒を見てやるといいです。なれてくると一人でやれるようになります。

    できれば、1年生の教材から使用するといいと思います。内容や構造が簡単で文章が短いですから、手順を学びやすいです。

    2~3の教材やってみて大体手順が分かってから、自分の学年のものに移った方が習得しやすいです。
   


0 題だけ読んで何のことが書いてあると思うか考えさせる。

   「イルカのこと」とか、「イルカのねむり方のこと」と答えれればそれでいいです。
   題から内容を予想する習慣をつける。

1 全文を読む(子どもと○読みをする)。  学習方法1

   ・ 目的→文を意識させる。漢字の読み
   ・ ○読みとは、一文ずつ交代して読むことです。一番最初の段階です。次の教材からは、子どもだけで音読したり、黙読したりするよ    うにします。
   ・ 段落ごとに交代して読む。段落を意識させる。→慣れてくると2の段階もここでやれるようになります。
   ・ 最終的には、3年生であれば黙読できるようにしたいものです。
   ・ どのやり方にするかは、子どもの習熟次第です。
 
2 形式段落に鉛筆で番号をつけさせる。  学習方法2

   ・ 目的→段落を意識させる。「段落」という言葉を使っていいです。
   ・ 「形式段落」とは、1字下げて書いてある文から次の1字下げて書いてある文の前までの部分をいいます。
   ・この教材では、すでにつけてあります。

3 つなぎ言葉(接続詞)に鉛筆で、<   >をつける。学習方法3

   
 やっているうちに分かってきますが、「。の後で、の前にある」と教えます。

    ②そこで、しかし ③すると ④さらに、そして ⑤すると

4 こそあど言葉(指示語)を鉛筆で囲む。 学習方法3

    言葉のはじめに、「こ、そ、あ、ど」がつく言葉。

    見落としがあってもかまいません。後からの読みで修正すればいいのです。

     ③ そのこと、これでは ③このことから、この時間 ④それに このとき ⑤これまで


5 題を手がかりに何のことが書いてあるか考える。 学習方法7
 
   読まないうちに0で予想したことと比べます。今度は全文を読んでいるので、題だけ読んだときとは違い、多少
  詳しく答えることが出来るはずです。

   ・ 何のことが書いてあるか。イルカのねむり方 

6 重要語句を指摘し、蛍光ペンで塗る。  学習方法8、9


 (1) 題にある言葉。
     「イルカ」と「ねむり方」

 (2) 題に関係ある言葉
     ①ねむって

 (3) 頻出語句
     脳 ⑤4回、⑥1回
 
7 文末表現の吟味  学習方法6

   文末表現だけを見ていくのです。同じ表現が圧倒的ですが、中には違う表現もあります。これに気づかせるのが目的です。
   全体が敬体です。
   ① と⑥、⑤の後ろ2文が現在形。
   ② ~⑤に過去形「~た」→したことを述べているから。
   問題を出している文→①のでしょうか。
   答えの文→⑥いるのです。 


<整理段階>

 これまで発見したことを表に記入します。ここは、思考の段階に移る前の準備段階です。

 書くことが中心ですから抵抗があると思いますが、上手にリードしてやってください。慣れると一人で出来ます。
 


<シート> ここでは横書きですが、縦書きに直して与える。

 記入の方法

   1 文頭の言葉をある程度の区切りで書き抜く。

      つなぎ言葉に印(<   >)をつける。

    2 文頭に対応する文末表現を書く。

    3 題にある重要語句を書く。
       
→イルカ、ねむり方

    4 題に関係ある語句や頻出語句を書く。

         イルカに関係する語句を書き抜く。→水の中、くらす、およいで、はやさ、いきつぎ、脳、休ませ
         ねむり方に関係する語句を書き抜く。→ねむって

    5 省略されている語句を(   )して補う。

                     「イルカのねむり方」
                                                    幸島 司郎
  段落番号 文頭の言葉           重 要 語 句 文末表現
   題イルカ                           ねむり方
 ①イルカ
ただ
ねむって
イルカ
イルカ    水の中  くらす
(イルカ)
(イルカ)                         ねむって
イルカ                            ねむり方
ます
ます
ません
のでしょうか
 ②動物のことを
<そこで>
<しかし>
これでは
                                                         
イルカ
イルカたち  およいで
(イルカ)                                                ねむって    
ました
ました
でした
ません
 ③ 関口さんは
<すると>
このことから
(イルカ)    およいで
(イルカ)     およいで
イルカ                                                 ねむって
ました
ました
ました
 ④< さらに>
昼間は
それに対して
よく見ると
<そして>
イルカは
(イルカ)     およいで
(イルカ)     およいで
(イルカ)     およぎつづけ
(イルカ)     およいで
(イルカ)
イルカ       およぎ                                     ねむって
ました
ました
ました
ました
ました
ません
 ⑤本当に
関口さんは
<すると>
かた目を
イルカは
(イルカ)                            脳                 ねむって

イルカ                             脳 休ませ 目
(イルカ)                            脳 休ませ 目
イルカ                             脳 休ませ
ません
ました
ました
ます
のです
 ⑥イルカはイルカ    およぎ        脳 休ませ      ねむってのです

             蛍光ペンはピンクと黄色を使いましたが、ここでは見えにくいので、赤と青にしました。
             子どもが作る表では、鉛筆で書いてから蛍光ペンで塗るといいです。
 


<思考段階>

 私たちは、赤ん坊のころから比較して考えるという思考方法を身につけ、その中で大きくなってきました。
例えば、りんごが2個あるとします。どちらか好きな方をとりなさいといわれると、その2個を比べて自分がほしい方をとります。
大きさ、色合いを比べて、大きくて色合いの好きな方をとります。りんごと柿があれば、自分の好きな方をとります。
比較の思考は、どちらかというと根源的な思考方法ということが出来ます。しかし、私たちは、これを思考方法というような意識
で使っていません。無意識に使っているに過ぎません。

 この「比較の思考」を意識的に学習に使おうとするものです。「比較の思考」の用い方を体得すると、国語の学習が情緒的では
なく論理的になってきます。論理の上に立った情緒的な学習になると、今まで感性の優れた子どもだけが得意な国語が誰でも
ある程度までは喜んで学習に取り組むようになってきます。


 1 シートを見て考える。 
     

       全体をある観点からヨコ(水平)に比較していく。

  (1)文頭の言葉を比べる。

段落番号 文の数  つなぎ言葉   こそあど言葉
  ①   4
  ②   4そこで、しかしこれ(では)
  ③   3するとこの(ことから)
  ④   6さらに、そしてそれ(に対して)
  ⑤   5すると
  ⑥   1

  (2)段落の始めの言葉を比べる。→段落の役割や内容を推察できる。

            ・ ほかとちがうことがかいてあるのは、→③関口さん(人間)
           ・ あとはイルカのことのようだ。
       ・ 一番大事なのはどの段落だろう。→⑥
         ・段落のつながりを示す言葉→<さらに>とあるから③と④がつながっている。      
        ・まとめの言葉はどこにあるか。→③ このことから 
 

  (3)文末表現を比べる。

       ・ 同じものを見つける。
         「ました」が多い。→ていねい体(敬体)の文末である。過去形である。
       ・ 違うものを見つける。
         「ません」→否定です。
         「のです」→断定です。はっきりしたこと。
         「のでしょうか」→問いかけです。
    
   ・問題を出している文末→①「のでしょうか」
       ・答えの段落→⑥「のです」

  (4)重要語句を比べて、考える。

      ・ 「イルカ」が、どの段落にもある。
      ・ 「ねむり方」に関係ある「ねむって」が、②~⑥全部にある。
      ・ 「イルカ」に関係ある「およぐ」が、②~⑥全部にある。
      ・ このことから、②~⑥はイルカがおよぐことについて書いてあることが分かる
      ・ まとめると
        ① には、「イルカが水の中でくらす」ことが書いてある。
        ② には、「イルカがおよぐ」ことが書いてある。
        ③ には、「イルカのおよぐはやさ」について書いてある。
        ④ には、③につけたして「イルカのおよぐ」ことが書いてある。
        ⑤ には、「イルカのおよぎと脳」について書いてある。
        ⑥ にも、「イルカのおよぎと脳」について書いてある。
      ということになる。これにどうなるのかということを付け加えると「要点」になる。

  (5)一番大事な段落は、どこか予想する。

              答えがある⑥

 2 文章構成をとらえる。

     教材文の上部にに明記してある。

      はじめ→①
         中 →②~⑤
       おわり→⑥

 

 3 題・冒頭部分から、読みの視点をとらえる。 

      ①から、「イルカは、いつ、どんなねむり方をしているか」を知るために読んでいく。

 4 冒頭部分と結びとの関係を探る。

     ① イルカは、いつ、どんなねむり方をしているか

      ⑥ イルカは、夜中に、脳を半分ずつ交代で休ませて、ゆっくりおよぎながらねむっているのです。

  5 段落の役割を考え、文章構成をつかむ。
  
   重要語句や文末表現を手がかりに段落の役割をつかみ、文章構造図を書いてみる。 

       ①問題ー②関口さんのかんさつと疑問-③調べたことと考えー④<さらに>調べたことと予想ー⑤調べて分かったこと

       ー⑥答え

 6 比較して考える。

   何を比較するかという観点を見つけるのは、子どもにとってとても難しいので、指導者が提示して解決する面白さを感じ取らせます。

   それには、指導者がいい観点を見つけなければなりません。これがなかなか難しいのです。

    子どもが興味を持って取り組みそうな観点

    文章にその回答がある観点、あるいは文章を手がかりに推測できるような観点。

  タイプは2つあります。

    1 どの教材にも共通する形式的な観点

      この観点は、どの教材でも当てはまりますので、その教材で特徴的なものを取り上げます。

       ・文頭の言葉を比較する。

       ・段落のはじめの言葉を比較する。

       ・文末を比較する。

       ・重要語句を比較する。→ここまでは既にやってきています。

       ・呼称を比較する。

    2 この教材でしか考えられない内容的観点

      内容的観点は、その教材でしか解決できない観点です。この観点が最も子どもの興味を引き、思考力をつけます。

      ところが、この観点を見つけやすい教材と見つけにくい教材とがあります。そこが指導者の腕の見せ所です。

   (1)イルカの昼間と夜中の様子
       ・泳ぐ早さはどうですか。→
④昼間ははやい。③夜中はゆっくり。
       ・いきつぎの回数はどうですか。→③夜中は少ない。昼間は書いていないが、多いと考える。
       ・動きはどうですか。→④昼間はいろいろな方向にはやくおよぐ。夜中はゆっくり円をかくようにおよぐ。
       ・目はどうですか。→④夜中は、かた目ずつ交代でと閉じる。昼間は両方あいている。
       ・脳はどうですか。→⑤夜中は脳を半分ずつ休ませている。昼は休んでいない。
       ・表にすると分かりやすい。
      昼  間      夜  中
およぐはやさはやいゆっくり
いきつぎの回数多い少ない
 動 きいろいろな方向にはやくおよぐゆっくりと円をかくようにおよぐ
 目りょうほうあいているかた目ずつとじている
 脳休んでいない半分ずつ休んでいる
    
     

 7 比喩表現を指摘する。 

       円をかくように→イルカの泳ぎ方を、子どもたちが円を書く動作にたとえている。

 8 びっくりしたことを発表する。(筆者の感動でもあります)

    ・かた目をとじたままおよげる。
     ・脳を交代で休ませることができる。
     ・イルカは、いつも動き回っている。


 9 段落の要点を「主語ー述語」の形でつかみ、要点をまとめる。

   「何がどうした」をとらえ、それに「どのように」をつけたすと簡単な要点になります。 

       要点をまとめてどう表現するかが問題です。話して表現するか、書いて表現するかです。

   書いて表現するのは高度な作業になります。低学年にとっては大変な作業です。また、総ての段落の要点をまとめるのは、
   至難の業です。ですから、要点の訓練は、簡単に分かる段落に限ります。面倒な段落はカットしていいです。そうしないと子ど   もはこの作業が嫌いになります。

    

10 筆者の工夫をまとめる。

  この文章には、筆者が3年生の子供たちに「イルカのねむり方」、片目をつぶってねるるという不思議さを分かってもらうための
   工夫が施されています。
    (1)ていねいなやさしいいいまわしをしている。
    (2)子どもに分かりやすい比喩を使っている。
       イルカを身近に感じさせるため「擬人法」を使っている。→②イルカたち
       子どもに身近な比喩表現→④円をかくように

14 筆者の感情・態度を明らかにする。(指導者・教師が中心となって誘導する)


     特にプラスイメージの言葉をつかってはいませんが、泳ぎながら眠ることができるイルカのすばらしさを子どもたちに伝えたい
     という筆者の気持ちが現れています。

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