イ ルカの会話  2年 光村図書

 この教材は、現在使われている教科書にはありませんので、教材文を横書きにして提示します。なお、教材では、段落番号が提示されていました。
 
 教材文

             イルカの会話
                                   烏羽山照夫

①イルカが泳い ているプールのそばにいると、ギュ、ギュとか、ピーピーとか、声を出していることに気がつきます。それは、まるで、たがいに何かを話し合っているように聞 こえます。イルカは、会話をすることができるのでしょうか。

②ある学者か、二頭のイルカをつかって、次のような実験をしました。

③ はじめに、プールの中にブサーのホタンをとりっけました。そして、かいちゅう電とうをつけて合図をしたら、ボタンを口先でおしてブザーを鳴らすことを教え ました。二頭のイルカは、すくにおほえてしまいました。何回も合図をくり返しましたが、けっしてまちがえることはありませんでした。

④ 次に、プールにしきりをつけて、かた方にだけブザーのボタンをとりつけました。そして、二頭のイルカをべつべつに入れました、。おたがいに声は聞こえます が、すがたを見ることはできません。こうしておいて、ボタンのない方にいるイルカにだけ、かいちゅう電とうで合図をおくリました。イルカはすぐにボタンを さがし始めましたが、いくらさがしてもないので、おすことができません。そのうち、イルカは、ピュ一ピューと口ぶえをふいているような声を出し始めまし た。すると、となりのプールにいたイルカが、ブザーのボタンをさがしておしました。

⑤このことから、合図を見たイルカが、ボタンをお してくれとたのんだのにたいして、となりのイルカが、それにこたえて、ボタンをおしたことが分かりました。

⑥そこで、学者は、水中マ イクロホンをつかって、もっとくわしく調ベてみました。すると、イルカたちは、ピューピューというような声のほか、パチパチとまめのはぜるような声、ギー ギーというドアのきしむような声など、いろいろな声で話し合っていることが分かりました。

⑦このように、イルカは、さまざ声をつかい 分けてこまったことやきけんなこと、うれしいことや悲しいことなどを、たがいにつたえ合っているのです。イルカは、会話をすることができるのです。
 

<教 材分析メモ>

   

1 題 名

 イ ルカのことが書いてあるんだな。イルカが会話できるのだろうか。私たちは言葉があるから会話できるのだが、イルカは、どうやって会話するのかな。声が出る のかな。どんな声を出しているのかな。どんなことを話しているんだろう。
子どもたちは、これまでの経験で、イルカのショウをTVで見 たことがあるでしょう。人間の言うことを理解して、あのようなすばらしい芸を見せてくれることに感心していると思います。ある意味でイルカは子どもたちに とって身近な存在であり、プラスイメージをもたせてくれる動物です。
いろんな疑問が湧いてきます。子どもたちが好奇心を持ち、読みた くなるような題です。

2 冒頭部分(書き出し)

 この教材の場合は、第1段落が冒頭部分で す。
このイルカは、海にいるのではなく。プールにいます。子どもたちは、筆者(鳥羽山さん)と一緒にプールの側にいて、イルカが声を 出しているのに気づき、話し合っているように感じます。そして、この教材の読みの視点である「イルカは会話をすることができるのか」という疑問をもつので す。

3 論の進め方

(1)方法→帰納的な展開

(2)順序→内容的順序  時間的順序

(3)構成
   1段落(序論)
    話題提示  イルカ  声を出してい る  話し合っているように聞こえる
    問題提示  イルカは、会話をすることができるのでしょうか。
    以下 本論
   2段落(確かめるための実験)
    2頭のイルカ  次のような実験
    3段落(実験と結果1) 挿絵あり
    ブザーのボタン  かいちゅう電とうで合図  ボタンをおす
     すぐおぼえた  けっしてまちがえない
   4段落(実験と結果2)
    プールにしきり 片方にだけボ タン イルカを別々に 姿は見えるが声は聞こえない
    ボタンのないほうにだけ合図 ボタンがない 声(ピューピュー)
     となりのイルカ ボタンをおした
   5段落(4段落から分ったこと)
    合図を見たイルカが隣のイ ルカに頼んでボタンをおした。
   6段落(実験と結果3)
    水中マイクロホン 
     いろいろな声で話し合っている(ピューピュー、パチパチ、ギーギー)。
   7段落(問題の答え、結論)
     さまざまな声を使い分けて伝え合っている。
    イルカは会話が出来る。

(4)論の展開
  題と挿絵で読者の興味を引きつけ、「ほんとにイルカが会話をすることができるのだろうか」という疑問を持たせて、読み進めさせている。
筆 者と共にプールの側にいてイルカの声聞き、話し合っているように感じさせて、「イルカは会話をすることができるのでしょうか」と問題を投げかけている。
あ る学者がこのことについて実験をしたといい、どんな実験かなと関心を持たせてから、第1の実験を紹介している。合図をしたらボタンをおすように教えたら、 直ぐ覚えて決して間違えなかった。イルカってすごいなと思わせて、さらに面倒な実験へと導いていく。
前の実験は、問題に関係のない実 験だったが、今度は会話をしているかどうかが分る実験である。実験の仕組みを紹介した後、合図を見たイルカがボタンを襲うとしたが、ボタンがないのでおせ ない。声を出したら、それを聞いた隣のイルカがボタンをおしてブザーを鳴らしたことを説明している。
そして、合図を見たイルカが、隣 の合図を見ていないイルカに声で伝えたということが分ったとまとめている。
これで終ってもいいのだけれども、学者がもっと知りたく なって水中マイクロホンを使って調べた結果を紹介し、イルカが会話をしているということを一層確かなものにしている。
最後に、さまざ まな声を使い分けていることに感動させ、私たち人間と対比させて、困ったこと、危険なこと、うれしいこと、悲しいことなどについて会話をしていることにも 感動させている。

4 比較する

(1)類比(反復)
  ア 構成上の反 復
     5、6段落 述べ方
      イルカの様子  分ったこと
  イ 内容上の 反復
     《視点》 3つの実験
      3段落  イルカの頭のよさ
       4段落  イルカは声を出して会話する。
      6段落  いろいろな声を出して会話する。
(2)対比
     《視点》 イルカと人間(文中には隠されている)
      1段落  声を出す 会話をしている
       7段落  いろいろな感情を伝えるために会話をする。

5 呼 称

   「イルカ」をどう 呼称しているか。特に、特徴的には呼んでいない。
  イルカ 2頭のイルカ イルカたち

6 筆 者の感情・態度を表す言葉

 
 1段落 音とか鳴き声と表現しないで、「声」と表現している。(擬人法→親しみ)
   2段落 すぐに けっして(感心・感動)
  7段落 使い分けて(感心・感動)

7 比  喩

   題   会話
  1段落  声
       まるで、たがいに何かを話し合ってい るように
       会話
  4段落  口ぶえをふいているような声
  6段落  まめ のはぜるようんな声
       ドアのきしむような声

8 言葉について

(1) 接続語
    3段落 そして
    4段落 そして
        すると
     6段落 そこで
        すると

(2)指示語
    1段落  それは(声を だしていること)
    2段落  ある(特定の)
    4段落  こうしておいて(前の2文をさしている)
          そのうち(前の分をさしている)
    5段落  このこと(4段落をさしている)
          それに応えて(たのみに)
    6段落  このように(4・5・6段落を受けている)

(3)順序を示 す言葉
    3段落 はじめに
    4段落 次に
    6段落 そこで

(4) 重要語句
  ア 題から
    イルカ→動物 
    会 話→私たち 人間
   イ 内容から
    声 
    たのんだ→こたえた
    話し合っている つたえ 合っている
  ウ 反復語句 
    イルカ 声 話し合って 分りました

(4) 注意す る語句
    1段落→プール とか まるで…ように 話し合って(複合語) のでしょうか
    2段落→学 者 次のような 実験
    3段落→はじめに とりつけ(複合語) すぐに おぼえてしまいました
         けっして…ありませんでした
    4段落→次に だけ すぐに さがし始め(複合語) いくら そのうち 
         出し始め(複合語) 
    5段落→こたえて 分りました
    6段落→はぜる きしむ 話 し合って 分りました
    7段落→さまざまな つかい分けて(複合語) つたえ合って(複合語)

(5)漢字
        新出漢字→事 泳ぐ 者 実 調べる 悲しい 問い  
        読み替え漢字→明 

9 文体と文末表現
   文体→敬休 
   時制 →現在形(一部過去形)
段落番号    文 末 表 現 時 制   役  割
 ①気がつきます   
聞こえます   
のでしょうか
現在形
現在形
現在形
説明
説明 現在形
問いかけ
 ② しました    過去形説明
 ③とりつけました        
 教えました          
おぼえてしまいました    
ありませんでした       
過去形
過去形
過去形
過去形
説明
説明
説明
断定(強調)
 ④とりつけました  
入れました    
できません    
おくりました   
できません   
出し始めました
おしました   
過去形
過去形
現在形
過去形
現在形
過去形
過去形
説明
説明
否定(不可能)
説明
否定(不可能)
説明
説明
 ⑤分りました         過去形説明
 ⑥調べてみました      
分りました         
過去形
過去形
説明
説明
 ⑦つたえ合っているのです   
できるのです         
現在形
現在形
断定(強調)
断定(強調)


10 冒頭部分と結びとの照応
 
     冒頭部分
    題     イルカの会話

   1段落    話し合って
           イルカは会話をすることができるのでしょうか

   結びの部分
    (6段落   話し合っている)
   7段落    つたえ合っている
           ↓
           会話をすることができるのです。

11 問いかけたいこと

   1段落  プールとは→この言葉から子どもたちは自分たちが泳ぐ長方形のプールをイメ
       イージすると思う。これでは正確なイメージ とはいえない。
       気づいたのは誰か。
       誰に聞こえるのか。
        イルカは何頭いるのか。
   2段落 直ぐってどのくらいか。
       ご褒美はあげたのか。
        イルカの頭のよさが分る言葉は。
       イルカが会話をすることが分ったか。
   3段落  なぜ、別々に入れたのか。
       見えるとなぜ駄目か。
       イルカが会話をすることが分った か。
   4段落 そのうちとは、どのくらいか。
        イルカが会話をすることが分ったか。
    5段落 イルカが会話をすることが分ったか。
   6段落 分ったのに、なぜ、実験したのか。
   7段落  鳥羽山さんが感心していることが分る言葉は。
       「会話」という言葉と同じ意味のことを言っている言葉は。
        会話をしている動物にどんなものがあるか。


    「イルカの会話」指導メモ


1 目 標

(1) 価値目標
   イ ルカは、人間と同じようにいろいろな感情を伝え合って生きていることを理解し、親しみを持つことが
   出来る。

(2) 技能目標
     
(3) 言語目標
   文末表現(問いかけ、理由)に注意することができる。

2 指 導計画(3時間扱い)

   第1時  全文概観……文章構成 段落の関係 論の進め方 要旨の予想
   第2時   内容精査
   第3時  筆者の工夫

3 各時間の展開概要

<第1 時目>

目 標
  価値目標
   「イルカは会話をしているのではないか」という予想を持つ ことが出来る。
  
技能目標
    段落を意識し、文末表現(問いかけ、理由)に注意することができる。
   言語目標
    新出漢字、読み替え漢字を読むことができる。

 展 開

1  題名を視写して考える。
  ・ 何のことが書いてあるか。
  ・ 何がどうすることが書いてありますか。

2  一斉読する。
  ・ 新出漢字
  ・ 読み替え漢字

3 黙読する。
  ・ 段落に番号をつける。
  ・ 指示語、接続語に印をつける。

4 席の順に1文ずつ音読する。
  ・ 文末表現の確認。
  ・ 段落の確認。

5 文章構成の大体をつかむ。
  ・ 問題を出している段落は
  ・ 実験を説明している段落は。
  ・ まとめている段落は。

6 次時 の予告
   大事だと思う言葉を1段落から、1つ見つけてくる。

<第2時目>

目  標
  価値目標
    3回の実験の結果、イルカはいろいろな声を使い分けて会話をそいていることを理解する。
   技能目標
     重要語句を指摘することができる。
   言語目標
      比喩表現に気づくことができる。
     
 展 開

1 重要語句を発表する。

2  課題を確認する。
  大事な言葉を手がかりにして、どんな実験をしたかまとめよう。

3 一人学び
(1) 題名から重要語句を指摘する。
   イルカ……ピンクで塗る。  会話……黄色で塗る。
(2)関係語句をさが す。
   「会話」の関係語句をさがして、ピンクで塗る。
(3)反復語句
    声、分りました

4 どんな実験をしたか。
(1)1回目の実験とその結果
(2)2回目の実 験とその結果
(3)3回目の実験とその結果

5 分ったこと
  イルカは会話ができる。

6  次時の予告をする。
   この文章を3つに分けてきてください。

<第3時目>

  目 標
  価値目標  筆者の工夫について知り、感想を書くことができる。
  技能目標  筆者の表現上の工夫 について指摘することができる。
  言語目標  順序を表す言葉を指摘することができる。
          
  展 開

1 前時までの想起する。
  ・誰が なにをした話ですか。
  ・実験の結果どんなこと がわかりましたか。
 
2 本時のめあてを確認する。
   鳥羽山さんの工夫をみつけよう。

3 全文を読む
   ・この文章にはいくつ段落がありますか。
   ・順序を表す言葉に印をつけながら読みましょう。

4 筆者の工夫をとらえる。

  (1)文章構成
    ・順序を表す言葉を発表してください。
       はじめに 次に そこで
         (そして そのうち すると こうしておいてこのことから このよう に)
    ・実験したことを書いてあるのは何番から何番までですか。
    ・一つ一つの文は、何という字で終っていますか。「た」  
    ・「ました」と「ます」ではどう違いますか。 (過去と現在)
    ・どこで分けてきたか発表する。はじめーなかーおわり
 (2)冒頭部分 と結
びの部分の呼応
   ・問題文と答えの文
     ・文末表現「できるのでしょうか」と「できるのです」
      ・「たがいに」「イルカ」「会話」
 (3)筆者の気持ちを考える。
   ・感心していることが分る言葉を見付けましょ う。
      「すぐにおぼえてしまいました」
      「何回も……けっし てまちがえることはありませんでした」
      「つかい分け て」
   ・鳥羽山さんがイルカをなかまのように考えていること が分る言葉をさがしましょう。
      「会話」 「たがいに」 「イルカたち」
      「話し合って、たのんだ、こたえた、つたえ合って」

5 まとめをする
  (1)教師がまとめを話す。
 (2)筆者の工夫に
ついて感 想を書く。
    鳥羽山の工夫について感想を書いてください。
 
6 次時の予告をする


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