説明文学習の実際

  準備するもの

1 教材(教科書) 

  鉛筆で書き込んだり、蛍光ペンで塗ったりしますので、コピーをしたほうがいいでしょう。教師によっては書き 
  込みを嫌う人もいます。

  手元になければ、大きい図書館では、各社の教科書を展示していることがあります。それからコピーします。

  また、図書館でなければ、教科書の出版社で面倒を見てくれると思います。

2 蛍光ペン 2本

  基本的には何色でもかまいませんが、ここではピンクと黄色を選びました。


   

 <基礎段階>

    この段階を訓練するには、その子の学年より下の学年の教材を使うといっそう効果的です。

    低学年は、お母さんが面倒を見てやるといいです。なれてくると一人でやれるようになります。中学年以上は、

   はじめから自分で出来ると思います。

    何年生であっても慣れるまでは、1年生の教材から使用するといいと思います。内容や構造が簡単で文章が
    短いですから、手順を学びやすいです。

    2~3の教材やってみて大体手順が分かってから、自分の学年のものに移った方が習得しやすいです。
    中学生でも、小学1年生の教材こなした方が方法を身につけるスピード早いです。

0 題を読んで考える。

  何のことが書いてあるのかな。

    題の下に鉛筆で簡単にメモする。単語だけでいいです。

1 全文を通読する。  学習方法1

  原則は、黙読ですが、低学年は、音読→微音読→黙読と進みます。

  通読しながら、読めない漢字や意味の分からない言葉に鉛筆(後で消すため)で印(簡単なものを自分で決め
 ていい)をつける。
  読めない漢字には、聞いたり教材文の欄外を参考にして仮名を振る。読めるようになったら消す。

  読みには、次の2通りがあります。 

 1 展開法(タテ読み)
 
  文章を書いてある順序に読んでいく方法です。私たちは普通この読み方をします。学校の授業でも主にこの方法をとります。(全文読み、部分読み)。
 この読みには、特に目的がありません。読みたいから読むのです。筋や細部を大事にします。
 ○読みは、タテ読みです。

 2 層序法(ヨコ読み)
 
 ある目的を持って文章全体を読む方法です。部分読みは使わずに常に全体を読みの対象にします。筋や細部はあまり関係ありません。関係ない部分は読み飛ばしてもいいのです。黙読が中心になります。目的を意識してそれをすばやく見つけるのです。
 学習方法の2以降は、ヨコ読みです。2は、段落の頭に着目して、1字下げのところを見つけていきます。3は、つなぎ言葉だけ、4はこそあど言葉だけといった具合です。
 この方法は、調べ読みのとき力を発揮します。


 

2 形式段落に鉛筆で番号をつける。  学習方法2

   2回目の全文通読になりますが、丁寧に読むのではなく、1マス分下がったところだけに目をつけながら作業を
    します。

    見落としがあってもかまいません。後からの読みで修正すればいいのです。

3 つなぎ言葉(接続語)に鉛筆で、印<   >をつける。

                         学習方法3

    やっているうちに分かってきますが、「。の後で、の前にある」と教えます。
    例えば、「しかし、そして、けれども」など。
    3回目の全文通読(探し読み・発見読み)ですが、視点を持っての読みですから、詳しい読みではありません。


4 こそあど言葉(指示語)を鉛筆で囲む。 学習方法3

    言葉のはじめに、「こ、そ、あ、ど」がつく言葉。
    見落としがあってもかまいません。後からの読みで修正すればいいのです。

   ・ この、 その、 あの、 どの
   ・ ここ、 そこ、 あそこ、どこ
   ・ こんな、そんな、あんな、どんな
   ・ これ、 それ、 あれ、 どれ
   ・ こう、 そう、 ああ、 どう
   ・ こちら、そちら、あちら、どちら
     

     4回目の全文通読(探し読み・発見読み)ですが、視点を持っての読みですから、詳しい読みではありません。

5 題を手がかりに何のことが書いてあるか考える。 学習方法7
 
  読まないうちに0で予想したことと比べる。今度は全文を読んでいるので、題だけ読んだときとは違い、多少
  詳しく答えることが出来る。
 

6 重要語句を指摘し、蛍光ペンで塗る。  学習方法8、9

  (1)題にある言葉→1~3程度あります。

 (2) 題にある言葉に関係る言葉

 (3)頻出語句→何回も出てくる言葉です。

 
    見落としがあってもかまいません。後からの読みで修正すればいいのです。

 文末表現を指摘する。  学習方法6

   文末表現だけを見ていくのです。同じ表現が圧倒的ですが、中には違う表現もあります。これに気づかせる 
   のが目的です。

   

8 挿絵の内容を説明している段落を指摘する。 学習方法15

    ちょっと思考の段階に入りますが、挿絵や写真がある場合は、その挿絵や写真のことがどの段落にあるか
   探すのです。

 <整理段階>

 これまで発見したことを表に記入します。ここは、思考の段階に移る前の準備段階です。

 書くことが中心ですから抵抗があると思いますが、上手にリードしてやってください。慣れると一人で出来ます。
 高学年は、表を作らなくても次の段階(思考編)をやれるようになります。高学年や中学生は文章が長くなるの
 でかえって混乱するかもしれませんのであまり勧めません。慣れるためには、1・2年教材で練習をするといい
 です。

 
<シート> ここでは横書きですが、縦書きに直して与えます。

          低学年では、マス目のノートを使いますので、シートにしますが、

          高学年は自分でノートにつくります。

                         「題」
                                                    筆者名
  

段落番号  文頭の言葉             重 要 語 句  文末表現
 ① ひとつの段落の中にその段落の文の数だけ行ができます。
 ②
 ~
 ⑩

  シートに記入する。

    1 文頭の言葉をある程度の区切りで書き抜く。

      つなぎ言葉に印(<   >)をつける。

    2 文頭に対応する文末表現を書く。

    3 題のある重要語句を書く。

    4 題に関係ある語句や頻出語句を書く。

    5 省略されている語句を(   )して補う。


<思考段階>

 ここでいうのは、「比較の思考」のことです。
私たちは、赤ん坊のころからこの思考方法を身につけ、その中で大きくなってきました。
例 えば、りんごが2個あるとします。どちらか好きな方をとりなさいといわれると、その2個を比べて自分がほしい方をとります。大きさ、色合いを比べて大きく て色合いの好きな方をとるのです。りんごと柿があれば、どちらか自分の好きな方をとります。比較の思考ということを意識してはいませんが、対象物を比較し て判断しているのです。比較の思考は、どちらかというと根源的な思考方法ということが出来ると思います。

 この「比較の思考」の用い方を体得すると、国語の学習が情緒的ではなく論理的になってきます。論理の上に立った情緒的な学習になると、今まで感性の優れた子どもだけが得意な国語が、誰でもある程度までは喜んで学習に取り組むようになってきます。


1 比較の対象→何を比較するのか。

    ・書かれてある内容
    ・ 文章の構成(文、形式段落、意味段落、文章)
     →説明文は、大きく3つの部分に分けられます。

       低学年では、「はじめ・中・おわり」(3年生で提示されます)といい、高学年では、「序論・本論・結論」  
                といいます。
       普通、序論と結論は、文章の始めの段落と終わりの段落にに位置しています。
    ・同じものの前と後
    ・文末表現
    
2 比較の観点→どんな観点から比較するのか。

 (1)対 比
    対比して物事を見ることによって、物事がより明らかになり本質がうかびあがってきます。対比の観点(視点)
   を見つけることが鍵です。

 (2)類 比
    似たようなところに目をつけてものごとをずうっと見ていくことにより、その類似性や共通性が明らかになり、
    物事の本質が明らかになってきます。

 (3)反 復 
    基本的には類比と同じですが、類比的なものが時間的に次々と展開していったり、同じ事柄が変化、発展
    していくことです。
    そのために、説得性が強まっていきます。 イメージや意味が強調されます。

 

3 読みの反復と比較の思考

    これまで、何回も読んでいます。

   ①通読
   ②形式段落に番号をつける。→前文を詳しく読むのではありませんが、一字下げを見つけて番号を振ってい

                       く作業の中で、全文を部分的に読んでいます。
   ③つなぎ言葉に印をつける。→つなぎ言葉という観点で全文を読んでいく。部分的にしかならないが②よりは
                       詳しく読むことになる。
   ④こそあど言葉を鉛筆で囲む。→こそあど言葉という観点で全文を読んでいく。部分的 にしかならないが②
                        よりは詳しく読むことになる。
    ⑤題にある言葉をぬる。→この作業でも詳しくではありませんが全文を読んでいます。
   ⑥題にある言葉をぬる。→この作業でも
詳しくではありませんが全文を読んでいます。
   ⑦関係ある語句を探す。→この作業でも
詳しくではありませんが全文を読んでいます。
   ⑧文末表現のチェック→この作業でも
詳しくではありませんが全文を読んでいます。
   ⑨ 段落の言葉を書き抜く。
→この作業でも詳しくではありませんが全文を読んでいます。
   ⑩重要語句を書き抜く。→この作業でも詳しくではありませんが全文を読んでいます。
   ⑪ 文頭の語句を書き抜く。→この作業でも詳しくではありませんが全文を読んでいます。
   ⑫重要語句を書き抜く。→この作業でも詳しくではありませんが全文を読んでいます。
   ⑬文末表現を書き抜く。→この作業でも詳しくではありませんが全文を読んでいます。

 合計すると、13回以上も読んでいることになります。もっとも詳しく読んでいるわけではありませんが、観点ご
とに読んでいる時でも他の文章も目に入ってくるので読んでいることになります。
 同 じ文章を何回も読むということは苦痛です。しかし、このようにやってくると知らず知らずのうちに読んでしまいます。また、観点ごとに読んでいくのですからそ こだけに意識を集中させるようになり、黙読のスピードがついてきます。さらに、この過程で「比較の思考」が知らず知らずのうちにはたらいています。「読書百遍意お のずか
ら通ず」です。

<具体的思考>

 1 シートを見て考える。 
     

       全体をある観点からヨコ(水平)に比較していく。

  (1)文頭の言葉を比べる。

     ・段落毎の文の数を意識させる。(低学年対象)

      ・つなぎ言葉(接続語)やこそああど言葉(指示語)はないか。

      ・どんな言葉が多いか。

  (2)段落の始めの言葉を比べる。→段落の役割や内容を推察できる。

     ・ 一番大事なのはどの段落だろう。

       ・段落の冒頭に注目して、段落のつながりを示す言葉を見つける。ない教材もある。
        「はじめに、次に、」、「第一に、第二に、第三に、」など。 

      ・問題を出している段落と答えの段落を見つける。
       問題を出している段落が、最初か、その次が多い。
       答えを言っている段落は、最後か、その前にある。

     ・まとめの言葉はどこにあるか。
       このように、この(研究・実験・観察)から、このことから、これらのことから、

  (3)文末表現を比べる。

      問題を出している文末→「でしょう、でしょうか」など。
      答えの段落→「のです、からです」など。

  (4)重要語句を比べて、考える。

      ・題にある重要語句がどの段落にあるか。

      ・何回も繰り返されているのは、どの段落か。

      ・どの段落に塗ってある言葉が多いか。→その事についての内容が詳しく書いてある。

      ・混じった色が塗ってあるのはどこか。→題と同じ言葉があるということは、問題提示とか、まとめの大事な段落。

       ・頻出語句(同じ言葉が何回も繰り返されている)は、あるか。なんという言葉か。

  (5)一番大事な段落は、どこか予想する。

 2 文章構成をとらえる。

   全文を大きく3つ(はじめ・中・おわり、序論・本論・結論)に分けてみる。

 

 3 題・冒頭部分から、読みの視点をとらえる。 

      題や冒頭部分(序論)を手がかりに、何のどんなことを説明しているか考える。

 4 冒頭部分と結びとの関係を探る。

     冒頭(序論)と結び(結論)を対比して、視点がどうまとめられているか考える。

  5 段落の役割を考え、文章構成をつかむ。
   (問題提起、説明、例、意見、まとめ等)

      重要語句や文末表現を手がかりに段落の役割をつかみ、文章構造図を書いてみる。 


 6 比較して考える。
   比較する観点を見つけてそのものの変化を追っていくことによって、筆者の述べていることが明らかになってきます。


 7 挿絵や写真にタイトルがないときは、自分でつけてみる。

   子どもが内容を理解して、表現するいい訓練になります。

 8 比喩表現を指摘する。 

   たとえを発見させます。何を何にたとえているか。

 9 筆者の感情・態度を表している語句を指摘する。

   説明文であっても必ず筆者の気持ちを表す言葉が、「助詞、修飾語、文末表現、比喩等」にこめられています。


10 段落の要点を「主語ー述語」の形でつかみ、要点をまとめる。

   「何がどうした」をとらえ、それに「どのように」をつけたすと簡単な要点になります。 

       要点をまとめてどう表現するかが問題です。話して表現するか、書いて表現するかです。

   書いて表現するのは高度な作業になります。低学年にとっては大変な作業です。また、総ての段落の要点をまとめるのは、
   至難の業です。ですから、要点の訓練は、簡単に分かる段落に限ります。面倒な段落はカットしていいです。そうしないと子ど   もはこの作業が嫌いになります。

   書いて表現するのは、高学年になってからやった方がいいと思います。

11 全文の要旨をまとめ、筆者の願いについて考える。

   これは高学年の作業です。教師でもなかなか面倒なのです。ですから、簡単な教材(低学年の教材)を使って訓練する方が    生産的です。

12 表現技法を調べる。(比喩、擬人、倒置、省略、反復)    

    筆者の感情を探るいい材料になりますし、子どもたちが表現活動をするときに役立ちます。

    これも高度な作業ですが、部分的に絞って探させると見つけることができるようになります。総てを見つけなくてもいいので      す。


13 読者を説得するための筆者の工夫をまとめる。

   (題、論の展開、文末表現、例の内容・順序、表現技法、語句の使い方等)

   筆者は、対象学年の子どもたちが興味を持って読み進めるためのいろいろな工夫を凝らしています。

   これも高度な作業ですが、部分的に絞って探させると見つけることができるようになります。総てを見つけなくてもいいので      す。

   低学年にあっては、指導者・教師が中心となって誘導します。


14 筆者の感情・態度を明らかにする。(指導者・教師が中心となって誘導する)

    これも高度な作業です。

    説明的文章には、そのことに対する筆者の感情、感動、態度が必ず含まれています。文、修飾語、助詞、文末
   表現、比喩など
から、筆者の感情、感動、態度を探り、物事に対する見方、考え方を学んでいくのです。

    筆者の感情・態度は、は直接表現されている場合と間接的に表現されている場合があります。同じ物事を表す時
   に、なんという言葉で表現するかということ です。例えば、「チチオヤ」を「父、父親、お父さん、父さん、パパ、おや
   じ」などと呼びますが、どの言葉を使うかによってその人物とチチオヤとの関係や気 持ちがが推測できます。

   また、間接的に表現されている場合は、修飾語に筆者がどんな言葉を使っているかで分かります。そのことに好意
   を持っていればプラスイメージの言葉を使い、好意を持っていなければマイナスイメージの言葉を使っています。

   プラスイメージの言葉とは、誰もがいい感じを持つ言葉のことです。
   例えば、「きれいな花」と「みすぼらしい花」では、その人物がその花に対してどんな感情を持っているか分かります。

<発展段階>

   対象児童によってどの活動を選択するかは、指導者が決める。

1 部分を図表やイラストに書いてみる。

2 意味段落に小見出しをつける。

3 筆者の考え・意見を書き抜く。 

4 目的にそって、部分や全文を要約する。

5 自分の感想や意見をもつ。

   内容、構成、表現、筆者の意見などについての自分の考えを話したり、書いたりする。

6 発展読書をする。

   似たようなもの、こと、材料、テーマを取り扱った本を読む。

7 簡単な説明的文章を書いてみる。








 

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